#15:わからないことを訊くということ

メンタルヘルス対策研究所の高橋です。メンタルヘルス対策に関するあれこれを情報発信しています。皆さんの日ごろの社内の健康管理やメンタルヘルス対策、ストレス対策に参考にしてもらえると嬉しいです。

今回はストレスとコミュニケーションについて深堀りしてみましょう。産業医をしていると、うつ状態になる方によく見られる傾向として、誰にも相談できないと思って一人で問題を抱え込み、どうしようもなくなってうつ状態に陥る人を結構みます。上司や先輩、同僚が忙しそうなので、仕事でわからないことがあっても相談できず、かといって一人ではどうしていいかわからず、時間ばかりが過ぎ、業務がたまってしまい、残業に残業を重ねてしまうというケースがあります。本人は業務量が多すぎる職場の問題と認識されていましたが、本当はもっと早くに相談してやり方を教わり、業務をこなしていくことで悪循環から抜け出すことができます。また一日に処理しきれないものは翌日に回すということに不安を覚えるのもこのような方によく見られます。残業時間はせいぜい1日2時間までとしないと、疲労が蓄積して、消耗してしまいます。一日2時間の残業で、月の残業時間がおおむね45時間程度になるのです。

このような方に足りないのは、わからないことを訊く、相談するというソーシャルスキルです。誰にいつ、どのように相談をもちかけて対応してもらえばいいのか、そのためにどんなやり方をすればいいのかということももちろんですが、一番根っこにあるのは、仕事で困ったことは上司や先輩に相談することが絶対必要であるという認識がないことだと思います。さらに、上司や先輩は後輩の仕事がうまくまわるように指導する役割を担っており、相談されることを歓迎するという認識です。忙しそうにしていると中断しては悪いと思い、相談することも悪いと判断してしまっているのです。そのため仕事で空回りしてしまって、時間の浪費につながってしまいます。そして時間がたりない、仕事量が多すぎるという認知になります。

まずは仕事のやり方をわかっている人に、いつなら時間を作ってもらえるかを聞いて、その時に自分のわからないところを端的に質問することが必要です。そのために、自分がどこがわかっていて、どこがわからないのか、どこができて、どこができないのかを把握しておくことは前提条件です。これができないと冗長な質問となり、適切な回答ができないので、時間がかかってしまい、上司や先輩も嫌な顔をすることになったりします。またどのくらいの時間をとってほしいか、また質問の緊急性をあらかじめ伝えることも大切です。それによって相手も必要な時間をいつ用意すべきかがわかり、効率的な時間配分ができます。

これらのことを判断して対応できる力がソーシャルスキルになります。このようなスキルは、仕事を効率的に進めるためにも、本人のメンタルヘルスを保つためにも必要なスキルです。わからないことを聞くのは、仕事をするうえで必須のソーシャルスキルです。

これがうまくできるような環境を整えることも、仕事がはかどり、従業員が生き生きと働ける職場になり、ひいては企業文化につながります。

この点を経営者や管理職の方、すべての従業員が理解して実践できるようになると働きやすく、成果が上がる職場になっていきます。そして多くの人がそんな職場で働きたいと願う職場になります。参考にしていただければ幸いです。

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