メンタルヘルス対策研究所の高橋です。メンタルヘルス対策に関するあれこれを情報発信しています。皆さんの日ごろの社内の健康管理やメンタルヘルス対策、ストレス対策に参考にしてもらえると嬉しいです。
ちょうどパリオリンピックが終わったところですね。選手たちは本番で最高のパフォーマンスを発揮するために、スポーツ自体のスキルをあげるだけでなく、メンタルトレーニングも積んでいたりします。その中で大事なことは、そのときどきに自分にどのような言葉がけをするかになります。これがセルフトークといわれるもので、セルフトークには肯定的なものも否定的なものも含んでいますが、そのなかでポジティブな自己肯定の言葉やフレーズを意識的に繰り返し唱えることで、自己意識や信念を強化してポジティブな自己イメージを形成する方法をアファーメーションと言ったりもします。
今回はセルフトークを深堀してみましょう。
みなさんは独り言をいいますか? 独り言もセルフトークのひとつでもありますが、セルフトークとは、自分自身に対して無意識的または意識的に行う内的な対話を指します。これにはポジティブなものもネガティブなものも含まれ、日常的な思考の一部として行われます。心の声として自分にいろいろ語りかけたり、自己批判する言葉のことです。待ち合わせ時間に遅刻した、会議のプレゼンで失敗したときなどに、「なに馬鹿なことやってんだ」「お前なんか価値がない」とか、プレゼン前に「どうせうまくいかない」など、自分が自分に対して厳しいダメ出しをしていることがないでしょうか?これらはネガティブなセルフトークの例です。これに対して「頑張ればできる」「よくやった」などはポジティブなセルフトークです。
みなさんはどちらのセルフトークが多いでしょうか?
ネガティブなセルフトーク(自己批判)が強く大きいと、どうしても不安がつよくなるし、その結果やはりうまくいかない可能性が高くなってしまいます。
ネガティブなセルフトークはどこからやってくるのでしょうか?
子供のころに養育者からかけられた言葉や、教師や指導者からかけられた言葉がもとになっていたりします。
いつも親から「あんたはダメな子ね」と叱られていた子供は、大人になっても、何か失敗するたびに「あんたはダメね」という親の声を自分の声として聴くようになってしまうことがあります。「どうせできない」「あなたには無理」などの自己批判の声のなかには、実は失敗しないように、身の丈以上のことをやったり、望んだりして社会から見放されないようにという保身につながる要素もあったりします。しかし、その声を無条件に取り入れていると、自分のなかの希望や熱意がそがれてしまう言葉も多くあります。今一度、「それは本当なのかな?」と改めて問い直してみることが大事です。子供のころにはできないということも、今なら人々に協力してもらったり、準備を整えて実行することで実現できることもたくさんあります。一人では無理でも、協力者を得れば多くのことは実現可能です。
ネガティブなセルフトークが出てきたからと言って、ないことにしたり、いきなりポジティブなものに変えようと思ってもうまくいかないことが多いです。まずはその声をきいて、どこから来たのかなと思いをめぐらし、そしてその不安や批判のいい面は受け取り、そのうえでどうしたらいいのか、どうしたいのかをきちんと考えていくことが大事です。ただし、ネガティブな声に圧倒されてしまうなら、カウンセリングなどを通して、自分を受け入れる練習をしていくことが必要になるでしょう。セルフコンパッションもその方法の一つになります。
ネガティブなセルフトークにも自分を守るそれなりの役割があったのです。それを踏まえて、セルフトークとうまくつきあえるようになるといいですね。