メンタルヘルス対策研究所の高橋です。メンタルヘルス対策に関するあれこれを情報発信しています。皆さんの日ごろの社内の健康管理やメンタルヘルス対策、ストレス対策に参考にしてもらえると嬉しいです。
令和4年の厚生労働省の労働安全衛生調査の結果では従業員の80%越えが職場でストレスを感じており、仕事量、仕事の失敗、仕事の質、対人関係の順となっていた。一方労災認定は710件で、そのうちパワハラが147件と断トツに多く、次が悲惨な事故の体験や目撃89件、仕事内容や量の変化78件と続き、同僚からの暴力、嫌がらせ73件、セクシャルハラスメント66件となっていた(出典:厚生労働省 職場におけるメンタルヘルス対策の現状等 2024/3/29 https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001236814.pdf)。
労災認定に関するパワハラの心理的負荷の強度はパワハラ事案の内容に加えて、組織の対応が影響している。パワハラ事案そのものが「強」と判定される場合は、治療を要する身体的暴行、精神的攻撃として何度も大勢の面前での人格否定などが挙げられている。また、パワハラ事実が確認されたにもかかわらず、組織が対応しない場合は精神的強度は「強」と判定される。
通常ある程度の規模の組織にはパワハラ相談窓口が設置されているが、相談窓口に相談して、有効な対策が取られない企業も存在する。とくにパワハラを行っている人物の社会的地位が高いほど、パワハラを行った本人からの聞き取り内容を優先して判定し、容認の態度をとる企業が多い。これは聴き取る対応をする人物が、自分より職位が上の人物を判定・指導することの難しさを示している可能性がある。それに対して、裁判で争うとか、労働基準局に調査申請などをして争うにしても、かなりの時間を要することからどうしても、離職しない限りは泣き寝入りになりがちである。産業医の立場でみていると、あきらかに対応が必要とされる場合で、対応されない場合や放置される場合は、当該者のメンタル不調はかなり悪化することから、組織が適切な対応をしていくことが本当に必要と感じる。しかし、立場が優位なものを結果的に守ろうとする方向に流れてしまう組織風土には辟易としてしまう時がある。教育界にも同じような傾向がみられ、まだまだ対策の遅れが目立つと感じる。
日本の文化的風土として目上の者を尊重するということがあるが、明らかに問題がある場合は毅然とした対応がとれる仕組みがつくられることが必要だと感じる。過去の裁判事例など、最終的な判断から考えれば、組織対応の悪さは、組織の問題点となり、裁判の判決などによってはマスコミ対応が必要なる可能性も高く、組織としてのダメージも大きくなるのであるから、早急な是正がなされることを望む。